2010年10月21日

優太

「ひょっとしたら息子さんは自分の足で立つことは出来ないかもしれません」

医者の宣告から半年。
2歳半になった息子の優太は成長も遅く、まだつかまり立ちすら出来ないでいる。
TVではJリーグ元年から今までの歴史を振り返っているが、妙子の耳には何も入ってこない。
どうしてウチの息子が?出来ることなら自分が代わってあげたい。何度もそう思った。
夫とも話し合って、三人で助け合って生きていこう、ってそう決めたのに。
いつまで経っても前向きになれない自分に心底嫌気がさす。
『あー!あーー!!』
寝かしつけたはずの息子の声でふと振り返る。
・・・優太?
そこにはぎこちないながらもしっかりと自分の足で立つ息子の姿が。
まだ足元も覚束ない。両手をぐるぐる回すようにしてバランスを取りながら一生懸命歩いてこようとする。
急いで電話を取り残業で遅くまで仕事をしている夫に電話を入れる妙子。
「あなた!優太がっ…!優太がっ…」
泣き崩れ、言葉にならない母の後ろで、笑顔で斜め上をしっかりと指差す息子。
指差した先にあった小さなTVの中では全盛期のカズが華麗にステップを踏んでいた

投稿者:FC-Cyberstationat 08:05| ジロー日記 | コメント(0) | トラックバック(0)

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