2009年11月05日

キングカズ〜ばあちゃんのすごろく〜

カズは小さい頃、家の事情でばあちゃんに預けられていた。当初、見知らぬ土地に来て間もなく当然友達もいない。いつしかカズはノートに、自分が考えたすごろくを書くのに夢中になっていた。それをカズはばあちゃんに見せては、

「ここでモンスターが出るんだよ」
「ここに止まったら三回休み〜」

カズのばあちゃんはニコニコしながら、「ほうそうかい、そいつはすごいねぇ」と相づちを打っていた。カズはそれが何故かすごく嬉しくて、何冊も何冊も書いていた。やがてカズにも友達が出き、そんなこともせず友達と遊びまくってたころ家の事情が解決され、カズは家に戻った。ばあちゃんは別れる時もニコニコしていて、「おかあさんと一緒に暮らせるようになってよかったねぇ」と喜んでいた。

十数年前、カズのばあちゃんは死んだ。89歳の大往生だった。遺品を整理していた母からカズは、「あんたに」と一冊のノートをもらった。開いてみると、そこにはカズのばあちゃんが作ったすごろくが書かれてあった。モンスターの絵らしき物が書かれていたり、何故かぬらりひょんとか妖怪も混じっていたり。カズは「ばあちゃん、よく作ったな」とちょっと苦笑していた。カズは最後のあがりのページを見た。「あがり」と達筆な字で書かれていた、その下に

「知良くんがワールドカップに行けますように」
カズは人前で初めて泣いた。

投稿者:FC-Cyberstationat 10:20| ジロー日記 | コメント(0) | トラックバック(0)

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